電車にて

「親の面倒を見ないといけないので、家を離れることができず、しかもこんな年になってはどこも雇ってくれない」、と、卑屈な表情の酔っぱらいが大声で喋っている。ついには、「おふくろじゃまだよなあ」、というようなことを言いやがるのでカチンときて軽く睨むが気づく気配もない。
聞いているのは友人なのか、しきりに、「でも、どんなことでも、というのであれば稼ぐ方法はある。それこそ蟹工船でも(笑)」と説得しようとするが、すべて世間が悪いので何をやってもだめだ、という意味のことで返す。「そんなもん言い訳だ、」と口に出してつぶやいてしまった自分も大人げないかもしれない。
自分の周りにも、若い人を中心にある種の諦観を抱く人が増えたような気がするが、やれることを全部やってもどうしようもないことと、やらずにすます為の言い訳を同化するのはどうかと思った。